ほいみの洞窟-裏口

セクキャバで働くほいみちゃんのブログだよぉ

部屋とTシャツとスイカとホットサンドと私

私は調理場に立っていた。

ひたいにたらりと汗が流れる。

 

夏に調理場に立つ、というのは世の中の主婦にとっては回避不可の日常である。

世の中の子どもたちや仕事帰りのお父さん、

暑い外で運動して、勉強して、仕事をして

とても立派だとは思うが

支えてくれる母、妻の毎日の努力を無下にしてはならない。

 

私はというと自分の好きなときに自分のために調理場にたてばいいのだから

夏は極力近寄りたくないガスコンロまわり。

 

ましてや熱伝導のいい調理器具はカチカチに熱くなり

コンロからの炎を見つめているとなんだか砂漠にいるような気持ちになる。

 

外での買い物から家につくなり私はエアコンを強に設定してつけた。

 

ガスコンロの前となればそんなエアコンも無力化され途端に先程までの恩恵を失う。

 

 

 

ーーー

 

頭の痛さとともに目覚めた朝。

昨日は飲みすぎたかな、と反省をする。

時計を見ようとしたが時計の前に脱ぎ散らかしたワンピースの残骸があり

起き上がってワンピースをどかして時計を見ることがどうしても億劫になり

スマホに手を伸ばす。

 

9時か。

 

もう少し寝ようかな、と思う反面で

そうだ、支払いに行かないと。と嫌なことを思い出す。

少し寝てから支払いに行けばいいかと思う反面で

洗濯槽の汚れを取りたいと思っていたことを急に思い出す。

夕方までなら洗濯機回しても近所迷惑にはならないしと枕を抱きしめたところで

愛猫がニャーンと目が覚めたか相棒ーと声をかけてくる。

 

重い身体を起き上がらせるとカーテンを開ける。

 

暑い。

 

セミが忙しく鳴いていて

空には飛行機がとぶ音が響いている。

 

時計を見て一度消したスマホの画面をもう一度つけラインを見る。

 

87件もの未読メッセージが溜まっている。

上の方に来ているラインを少し返し

 

ダボダボのTシャツ一枚で歯磨きをする。

 

洗濯機を見つめため息をついて

やるか。と気合を入れる。

 

窓の外はもう午前と言っても昼になるところでのんびりと田舎の風景が広がる。

 

私はお財布と携帯をカバンに入れ

Tシャツ一枚にショルダーバッグという格好で日焼け止めを身体に塗った。

 

日曜日とはいえ部活動なのか学生たちが駅で楽しそうに話をしている。

 

なるべく人目を避けてホームの一番奥のベンチで電車を待つ。

アイスカフェラテとスマホを両手に掲げ

こんなところで朝のブレイクタイムといったところだろうか。

 

電車がホームに滑るように入ってきたとき私は立ち上がり何も落としてないかキョロキョロしながら電車に乗る。

 

田舎の電車は今日もガラガラだ。

 

電車内ではブログを更新し

ちょうどブログが書き終わる頃目的の駅についた。

自転車でも来れない距離ではないがこの暑さを敵にするのは嫌で日陰で待ち、乗るという電車を選択した。

 

ーーー

銀行のATMコーナーの冷房がオアシスに感じた。しばらくここにいたいとも思った。

銀行といえば子どもの頃はキャンディーをくれるところという記憶で

 

ふと窓口に小さいバスケットが置いてあるか視線を持っていったがその姿を確認することはできなかった。

 

支払いを済ませ先程まで誇らしそうにしていたイヴ・サンローランの財布は

途端にやせ細り頼りなくなった。

 

スーパーへ移動する途中ジリジリと景色が揺らいだ。

太陽のやつ本気出してやがるな、と私は思った。

 

暑さにやられたのか何か食べようと思っていた気持ちはすっかりどこかへ行ってしまった。

 

昼過ぎのスーパーはあまり混んでいない。

入口付近に並んだスイカを見て

家にスイカがあることを思い出す。

帰ったら食べよう、なんて考えながら柔軟剤と洗濯槽クリーナーをかごに入れる。

 

その後もいくつかの食材とジュースやお酒を買ってレジを済ませまた駅に向かった。

電車を待ちながらタクシーだといくら位なんだろう、、とぼんやりタクシーを眺める。

車ってあっという間だよなぁと自分の足を見る。

 

太っているくせに筋肉質な脚が

どやっている。

 

電車に遅れが出ているアナウンスが流れる。

マスクが息苦しく

周りに人がいないことを確認してマスクをずらす。

 

 

あぁ、暑い。

 

袋が重くさっきはすぐについた道がやたら長く感じる。

 

家までこんなに遠かっただろうか。

 

いつも猫が挨拶をしてくれる他所の家の前で一度足を止める。

 

猫の姿はない。

 

暑いから部屋の中かな。と建物に一瞬目をやって少し残念に思いながらまた歩き出す。

 

ーーー

外での買い物から家につくなり私はエアコンを強に設定してつけた。

 

イカを冷蔵庫から取り出して一番好きな切り方で食べる。

一般家庭で作ったスイカにしては大きくて甘い。

みずみずしくてとても美味しかった。
f:id:hoimichan:20210801144528j:image

 

イカを食べ終わると先程まで何も食べたくないと思っていた胃袋が

水を得た魚のようになんだかおなかが空いてきたよと知らせてくる。

 

イカのお皿を洗いスタンバイさせる。

その前にと一度洗濯槽クリーナーを洗濯機に入れスイッチを押す。

 

髪をまとめて気合を入れて

私は調理場に立っていた。

 

ひたいにたらりと汗が流れる。

 

最近のお気に入りはホットサンドメーカーだ。

先程買ったヤマザキのチーズバーガーをのせて

 

パタンとしめる。

 

簡単にしまるくせにチーズバーガーはぎゅっと潰され苦しそうだ。

 


f:id:hoimichan:20210801144855j:image

 

弱火で火にかけている間、先程スタンバイさせたお皿に洗ったレタスをちぎり乗せる。

イカと一緒に頂いたきゅうりを斜めに薄く切り飾る。

ミックスベジタブルとミックスシーフードのエビを小皿に入れレンジに50秒かける。

 

ホットサンドメーカーをひっくり返し

レタスの上にエビやコーンを飾る。

 

オニオンドレッシングをかけて

小さなフライパンをホットサンドメーカーの隣に並ばせ火にかける。

 

温まったところで薄く油をしき

卵を焼く。

黄身だけは半熟にしたい。

弱火で水をたして蓋をする。

 

ホットサンドメーカーを開くと丁度いい焦げ目が付き、真っ二つにされたチーズバーガーが熱そうにしていた。

 

チーズバーガーをお皿に盛り付け後を追うように目玉焼きもお皿へと移動する。
f:id:hoimichan:20210801145418j:image

 

 

なんだかカフェランチのようだと思い外を見つめる。

 

その時だった。

 

窓の外に何か黒いものが近づいてくる。

なんだろうと思う間もなく

バンッ!と

窓にはっきりと血まみれの手がはりつく。

 

何が起きたかわからないまま

悲鳴も出せず私は立ち上がった。

 

心臓はバクバクしこれは夢だろうかとさえ思った。

 

恐ろしさのあまり身動きが取れずただじっと窓の外を見つめる。

人かと思っていたがそうではなかった。

 

窓の外には人の形をした何かがいる。

皮膚はただれ落ちそうな眼球はこちらを見ている。それも1体ではない。

 

この世のものとは思えない動きをした人ではないなにかが蠢きながら我が家を囲んでいる。

 

数百、数千の人ではない何かが...

 

私はハッと気づいたように

こうはしていられないと走り出す。

 

これはゲームやテレビではない、現実なのだ。

 

風呂場の脱衣所の床から

AK47を取り出す。

 

「またこいつを使う日が来るとはな。平凡なおっパブ嬢はもうやってられないってことか。」

 

窓の強度からいって窓をぶち破り外の何かが部屋に入ってくるのは時間の問題だ。

 

 

正直、アサルトライフルの扱いは自信がない。

 

キル数を稼ぐだけではやつらを一掃することはできず結果はバッドエンドになるに決まっている。とにかく高いところへ逃げなくては。

 

指笛を吹くと隣の部屋から武装した愛猫が走って寄ってきた。

 

背中にはいくつかの弾薬をつんでいる。

 

覚悟を決めた表情で目覚めたか相棒!と声をかけてくる。

 

セミの鳴き声をかき消すほどのうめき声が外から聞こえてくる。

 

もしかしたら私はここまでかもしれない。

 

スマホを取り出しラインを開く。

 

元気?と一言送る。

返事がすぐくるのかなかなか来ないのかわからないが

 

一言その言葉を送信すると

覚悟が決まった。

 

 

私は愛猫とともに玄関から外へ飛び出したーーー